「出会い系として宣伝」されていながら利用規約に「出会い系ではない」とある、有料ポイント制のトークアプリの多くは、運営者に関する情報があまり載っていないことがあります。
これについて疑問だったので自分でも法令を読んだ上で、経済産業局の消費経済課に実際に問い合わせて色々聞いてみました。
カエル18号
この記事を書いた、元広告代理店にて出会い系も取り扱っていたカエル18号です。
法律のことなので個人だけで判断せず、お国に確認もとりましたので、ご興味ある方はどうぞ。
※法律はケースを限定させすぎないように、あいまいな表現が多く、法律に該当・抵触するかは、最終的には裁判官にゆだねられるので、この記事も特定のアプリを指していないことをご了承ください。
運営者情報について法律の決まり
まず今回の焦点となる法律ですが、有料アプリの場合「特定商取引法」という法律の範疇(はんちゅう)となります。
さらに言うとアプリはインターネットを使っているので、同法の「通信販売」に分類されます。
運営者はこの法律に基づいて運営者情報を始め様々な情報を表記する義務があります。
カエル18号
それでは本題に入っていきます。
先に結論
先に結論から申すと、運営者情報は連絡先(電話番号またはEメールアドレス)さえ載っていれば、運営者名・住所などの情報は省略できます。
しかし省略する際は「省略事項を遅滞なく提供する」などの文言を添える必要がありました。
カエル18号
なので冒頭で紹介した画像の例は同法に対し違反している可能性があるかもしれません
※法律の是非は裁判所で決まるので筆者は明言しないことをご了承ください
それでは経済産業局の消費経済課の方との会話を踏まえ同法を解説していきます
経済産業局に聞いてみた
今回の件は経済産業局の消費経済課というところが相談窓口だったので、そちらに電話して聞いてみました。
ちなみに個別アプリ/サイトの相談となると通報扱いとなり、窓口も変わり質問できないので、全体的な法の解釈として伺っております。
まずは、このようなアプリは特定商取引法に基づく表記が必要か聞いてみました。
筆者:アプリ内のみで使用できるポイント販売しているアプリは特定商取引法に基づく表記が必要ですか?
消費経済課:役務を有償で提供する契約というのが(特定商取引法の)第二条にあるんですよ。
ポイントを購入して使用となると何らかの有償になるので、そうすると十二条の六の特定申込みを受ける際の表示ということで、表示が必要になってくると。
で、表示義務というのが一項にあるんです。
話の中にあった特定商取引法の各条文は以下になります。
第二章 訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売 第一節 定義 第二条
2 この章及び第五十八条の十九において「通信販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは特定権利の販売又は役務の提供であつて電話勧誘販売に該当しないものをいう。
(特定申込みを受ける際の表示)
第十二条の六 販売業者又は役務提供事業者は、当該販売業者若しくは当該役務提供事業者若しくはそれらの委託を受けた者が定める様式の書面により顧客が行う通信販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込み又は当該販売業者若しくは当該役務提供事業者若しくはそれらの委託を受けた者が電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により顧客の使用に係る電子計算機の映像面に表示する手続に従つて顧客が行う通信販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込み(以下「特定申込み」と総称する。)を受ける場合には、当該特定申込みに係る書面又は手続が表示される映像面に、次に掲げる事項を表示しなければならない。一 当該売買契約に基づいて販売する商品若しくは特定権利又は当該役務提供契約に基づいて提供する役務の分量
二 当該売買契約又は当該役務提供契約に係る第十一条第一号から第五号までに掲げる事項
2 販売業者又は役務提供事業者は、特定申込みに係る書面又は手続が表示される映像面において、次に掲げる表示をしてはならない。
一 当該書面の送付又は当該手続に従つた情報の送信が通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みとなることにつき、人を誤認させるような表示
二 前項各号に掲げる事項につき、人を誤認させるような表示
この話と条文によると基本的に有料ポイント制のトーク アプリは特定商取引法に基づく表記が必要になると思われますので、その前提で話を進めます。
筆者:特定商取引法ガイドによると
「特定商取引法は、広告に表示する事項を次のように定めています。」
の6項に
「事業者の氏名(名称)、住所、電話番号」
とありますが、特定商取引法ガイドや同法第十一条にある通り省略できますか?
消費経済課:はい、省略できます。第十一条にある通りですね。
やはり運営者情報は省略は可能なようです。
特定商取引法 第十一条については以下になります。
第十一条 販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。ただし、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、販売業者又は役務提供事業者は、主務省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。
一 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料)
二 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
三 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
四 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約に係る申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容
五 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合にはその内容を、第二十六条第二項の規定の適用がある場合には同項の規定に関する事項を含む。)
六 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項
※省略できるとの説明部分だけ、こちらで太文字に加工しています。
※補足. 上記引用のとして「広告」とありますが、ここでいう広告は一般的な広告とは違う表現で、サイトやアプリ内に表記する運営者情報も「広告」に該当するようです。
以下、特定商取引法ガイドによる広告の定義の引用です。
通信販売規制を受ける広告
販売業者等がその広告に基づき通信手段により契約の申込みを受ける意思が明らかであり、かつ、消費者がその表示により契約の申込みをすることができるものであれば、ここにいう「広告」に該当します。通信販売を行うことが明確に表示されている場合のほか、例えば、送料、口座番号等を表示している場合や、購入が実店舗では不可能な商品の広告等も通信販売広告に当たります。
広告媒体は問いませんので、新聞、雑誌等に掲載される広告だけではなく、カタログ等のダイレクトメール、テレビ放映、折り込みちらし、インターネット上のウェブサイト(インターネット・オークションサイトを含む。)、電子メール等において表示される広告も含まれることとなります。
なお、電子メールやインターネット上のバナー等により広告をする場合は、その本文及び本文中でURLを表示すること等により紹介しているサイト(リンク先)を一体として広告とみなします。したがって、電子メールやバナー等の本文中では商品等の紹介を一切行わずにURLのみ表示している場合であっても、そのリンク先で通信販売の販売条件等の広告をしている場合は、その電子メールやバナー等は通信販売の広告に該当します。また、電子メールやバナー等の本文中で商品等の紹介を行う場合、特に表示場所が限定されていない表示事項については、本文、リンク先のいずれに表示してもよいこととなります(ただし、リンク先が見つかりにくい場所に表示されている場合や、そのリンク箇所に何が記載されているのかがリンク元において不明瞭な場合等は、ここでいう広告義務が満たされていないと解されます。)。
省略する場合の条件を聞こうと思ったのですが、話が逸れてしまい聞き忘れました。すいません。
なので、あとから特定商取引法ガイドを見なおすと
広告の態様は千差万別であり、広告スペース等も様々です。
したがって、これらの事項を全て表示することは実態にそぐわない面があるので
ともあるので、全部載せるスペースが無い場合などが省略できる条件に当てはまりそうですが、具体例がないので、たぶんなんかしら理由を付ければ省略可能なんだと思います。
特に個人事業主は自宅が事務所なら自宅の住所を公開する事になるので、この省略案件を利用するケースが多いと思います。
省略できる事項は以下の通りです。
消費経済課:省略できない事項は第十一条にある通りで、分かり易いのは…今ネット開けます?そしたら特定商取引法ガイドの広告の「表示事項を省略できる場合」をご覧ください。
そこに省略できるできないの詳細が載ってますので。
消費経済課が仰った特定商取引法ガイドの該当部分は以下になります。
・広告の表示事項を省略できる場合
広告の態様は千差万別であり、広告スペース等も様々です。
したがって、これらの事項を全て表示することは実態にそぐわない面があるので、消費者からの請求によって、これらの事項を記載した書面(インターネット通信販売においては電子メールでもよい)を「遅滞なく」提供することを広告に表示し、かつ、実際に請求があった場合に「遅滞なく」提供できるような措置を講じている場合には、下の表のとおり、広告の表示事項を一部省略することができることになっています(法第11条ただし書)。
なお、ここでいう「遅滞なく」提供されることとは、販売方法等の取引実態に即して、申込みの意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって提供されることをいいます。 例えば、インターネット・オークションにおいては、通常、短期間の申込みの期間が設定されており、その直前に多数の者が競い合って申込みをすることも 多いため、「遅滞なく」提供することは困難であると考えられます。
この表にもある通り、「販売業者の氏名(名称)、住所、電話番号」は省略可能でした。
次は表示事項を省略した場合に必要な事を聞きました。
筆者:「遅滞なく提供することを広告に表示し」というのは必須ですか?
消費経済課:それは(中略)申し出に基づいて…ちょっと待って…(5分近く沈黙、たぶん条文を確認中)
やっぱり表示しないとダメだよね。
(特定商取引法ガイドを読み上げて)なので、表示してないと違反になる可能性があるという事ですね。
読み上げていた特定商取引法ガイドは以下の部分です。
したがって、これらの事項を全て表示することは実態にそぐわない面があるので、消費者からの請求によって、これらの事項を記載した書面(インターネット通信販売においては電子メールでもよい)を「遅滞なく」提供することを広告に表示し、かつ、実際に請求があった場合に「遅滞なく」提供できるような措置を講じている場合には、下の表のとおり、広告の表示事項を一部省略することができることになっています(法第11条ただし書)。
引用:通信販売|特定商取引法ガイドより抜粋
このガイドに該当する条文は、以下の部分になります。
ただし、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、販売業者又は役務提供事業者は、主務省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。
引用:特定商取引に関する法律 | e-Gov法令検索 十一条より抜粋
つまり特定商取引法に基づく表記事項を省略する場合は「省略事項を遅滞なく提供することを広告に表示」する必要がある、と法律に書いてあります。
カエル18号
「遅滞なく」という表現は聞き忘れましたが、調べてみると1週間前後という期間が多かったです。
「省略事項を遅滞なく提供することを広告に表示」というのをもう少し掘り下げて聞いてみました。
筆者:「省略事項を遅滞なく提供することを広告に表示」というのを表示するとき、どのような言い回しが良いですか?
消費経済課:言い回しは私共より弁護士などに相談した方が。
筆者:なるほどですね。一つ例えばなんですが「サービスに関する質問はお問い合わせください」というのでも良いと思いますか?
消費経済課:一応表記してあると言えるかもしれませんが…何とも言えないですね…
あぁ~もうちょっと消費者が分かりやすい、誤認することのない表示にした方が良いような気もしますが…その文言がダメですよとも言えないかな…
十一条の表記の中には消費者が分かりやくす誤認しないようにな表記を心掛けてくださいっということになっていますので…でも一応それも表記と言えば表記かな…
これが一般消費者にとって分かりやすいのかどうかの判断は私共には…
筆者:そこは裁判所が…ですかね
消費経済課:そうそう(笑)
筆者:とりあえず「連絡をもらえれば教えます」などを載せないとダメということですかね。
消費経済課:そうですね、はい。
具体例は判断しかねるとの事でしたが「特定商取引法 第十一条に基づいて省略事項を遅滞なく提供することを広告に表示」する際は「分かりやすく誤認しないように表示することが大事とのことでした。
これにて経済産業局 消費経済課の方との会話は終了です。
筆者:ありがとうございました!
消費経済課:はい、はいー。
※経済産業局 消費経済課とのやり取りは実際は30分ぐらい話していたのですが全文を載せると、とんでもない文字量になるので要点のみ端折っています。
会話内容を端折って文字にしてしまうとフランクですが、担当の方は質問を真摯に聞いていただき、都度条文の根拠を挟んで丁寧に答えていただき、本当に良い人でした。
運営者名は屋号/通称名でもいいの?
補足になりますが、冒頭で例に出した運営者情報の運営者名は「●●運営事務局」となっています。
たいていこの場合、法人登記または商号登記された正式名称ではなく屋号であることが多いです。
※屋号とは屋号とは、たとえば個人運営の雑貨屋さん「●●商店」のようなものです。(商号登記していれば正式名称ですが)
法人・商号名称はコチラで簡単に検索できます。
⇒国税庁法人番号公表サイト(国税庁サイト)
本題ですが、特定商取引法に基づく表記によると屋号のみでは法令を満たしているとは言えないようです。
Q16事業者の名称は屋号の表示で足りるでしょうか。
A16販売業者又は役務提供事業者の「氏名又は名称」については、個人事業者の場合は戸籍上の氏名又は商業登記簿に記載された商号を、法人にあっては登記簿上の名称を記載することを要し、通称や屋号、サイト名のみを表示することは認められません。
なので運営者名を「●●運営事務局」のような屋号のみでは、同法の表記事項を満たしていない可能性があります。
カエル18号
ちなみに屋号を載せること自体は問題ありません。
まとめ
先にも述べましたが、特定商取引法に基づく表記の運営者に関する情報は
- 省略は可能
- その場合はユーザーから連絡があれば開示すると表示する
という事でした。
そもそも省略可能とはいえ、基本は運営者情報が省略されていると、ユーザーからの信頼は薄れますよね。
特に出会い系/マッチングサービスなんかはユーザーからの信頼が大事な商売なので、省略しているとこを見たことありません。
出会い系/マッチングサービスを選ぶ際は、運営元がハッキリしているところを選びましょう!
カエル18号
それでは良い出会いを!